累犯障害者(山本譲司著)
■2011年4月30日
タイトルの「累犯」とは 繰り返し犯罪を行うこと を意味します。
著者は菅首相の公設秘書経験がある元衆議院議員。
給与流用事件で逮捕され、その後の獄中経験の中で見えてきた日本社会の闇の部分。
被害者としての障害者だけでなく、加害者としての障害者にもスポットをあてています。
社会の受け皿がないため罪を繰り返し、刑務所に入ろうとする人。そしてその再犯率の高さ。
聾唖者で組織された暴力団の存在。
障害者年金に目をつける組織。
数々の誤認逮捕。
初めて知ることばかりで、これは本当の事なのか? と信じたくない話が幾つも出てきます。
中でも、「手話は世界共通なんだ」と何かで聞いて信じていたことが、実は 健常者が認識している「手話」と聴覚障害が使っている「手話」には違いがあるんだということはショックでした。
そのために取り調べで交わされる会話にニュアンス・解釈のズレが生じ、誤認逮捕という悲劇を生んでしまっていること。
著者の周りには 刑務所が一番暮らしやすいという受刑者が何人もいるそうです。
著者の犯罪は許されるものではないと思いますが、その経験がなければ日本の現実が本という形で世に知られることはなかったと思うと不思議な気持ちになり、本を読む限り著者の活動を応援したくなってしまいます。
相当な取材をしなければこんな本は書けないだろうとも思いました。
「福祉による暴力」という言葉も頭に残りました。
福祉や教育、行政・病院に障害者待遇の改善を求める話が出てきますが、そちらの立場の本も読んでみたいと思いました。